起業の科学を読んでそのポイントをまとめていく part7
こんにちは、ひろぞうです。
今回で第3章「ソリューションの検証」に入ります。前回の「2-2前提条件を洗い出す、2-3課題〜前提の検証」の続きです。
https://hirolog426.hatenablog.com/entry/2019/05/30/120118
3−1UXブループリントを作る
最適化する前に入念に検証する。
この章ではサービスのプロトタイプを作成して、それを元にカスタマーが痛みを感じる課題を解決できるかをインタビューなどによって検証するProblem Solution Fit (PSF)の手順を紹介する。
どんな業界であってもプロトタイプによる実験は重要である。
米Startup Genomeのレポートによると、成功したスタートアップのほとのは課題とそのソリューションの整合性をとるPSFの段階でプロダクトの検証に注力している。
一方で失敗したスタートアップはプロダクトの検証と同じくらい、プロダクトの最適化にも労力をかけている。この最適化とはコストを下げたり、nice to haveな機能を追加してプロダクトの精度を高めること。検証する今の段階では最適化は早すぎる。
カスタマーの声を多く取り入れることによって、ソリューションを検証し、求められていないものを作るリスクを最小限に抑える。
「Content is King. UX is queen.」
内容は最重要であるものの、適切なUXを提供することはそれと同じくらい重要であるということ。第2章でカスタマージャーニーを作成して想定カスタマーの行動を想定したが、そこで考えた一連の行動の流れの中で自然とユーザーが使いたいと思えるUXを作ることが良いソリューションのポイント。
ソリューション仮説を磨き込む方法として「プロトタイプカンバンボード」がある。
トヨタ生産方式の生産指示カード「カンバン」をヒントに作られた。
(https://www.slideshare.net/masatadokoro/startup-science-81131092より)
これを使うメリットは3つ。
1プロセスを見える化することによって学びや検証プロセスが明確になり、メンバー間のコミュニケーションが活発化する。全体の進捗と今抱えている課題を毎日擦り合わせて行けば、メンバー間の食い違いが軽減され組織がより主体的に動ける。
2適切なタイミングでカスタマーからのフィードバックを得るプロセスを担保する。
プロトタイプカンバンボードにはカスタマーと対話するプロセスが2回ある。ソリューションが適切かを確認する「ソリューションインタビュー」とプロトタイプ完成後にUXなどに対する意見を聞く「プロトタイプインタビュー」である。人が欲しがるものを作る最良の方法は、実際にそれを人の前に出してみて欲しいものかを尋ねてみること。
3ボトルネックになっている場所が明確になり、リソースを適切に分配できる。プロジェクト全体の進捗速度はボトルネックの速度に引きづられてしまう。そこにリソースを投入して、ボトルネックを素早く解消しなければいけない。
カンバンボードの使い方
1課題を設定する
十分検証できた課題をボードの左端に貼る。
2価値提案、ソリューションを考える
顧客価値は顧客にとって価値のあることで、機能は関係ない。純粋に価値にフォーカスする。
一方ソリューションは価値を届ける実現方法。複数のフィーチャー(構成要素)に分けて考える。まずどのようなフィーチャーが考えられるかを付箋に書き出す。メンバー間でどのようなフィーチャーの組み合わせで実現するかを決めたら、プロトタイプカンバンボードでこれから実現すべきソリューションを示す「バックログフィーチャー」の欄に貼っておく。
ソリューションインタビュー
フィーチャーのリストアップが済んだところで本当に価値を提供できているかをカスタマーに確認する。「もし世の中に魔法のランプがあって、なんでも叶えてくれるなら(課題)を解決するためにどんなものが欲しいですか?」と聞いてみると仮説に対するフィードバックが得られる。
これも時間が許す限りできるだけ多くの人に対して行うと良い。
フィーチャーに優先順位
インタビューが終わったら、解答を踏まえてフィーチャーに優先順位をつけていく。
ポイントはカスタマーがそれぞれのフィーチャーにどれだけの価値を感じているか。評価方法としてmust-have, nice-to-have, don’t needの3段階に分ける。
初期のスタートアップはmust-haveのフィーチャーのみを実装することを心がけるべき。多くのスタートアップは顧客が要望する全ての機能を実装しようとするがこれは典型的な失敗例。それは、must-haveのフィーチャーがカスタマーの心に刺さっているかインタビューなどから判断しづらくなるため。
start up genomeのレポートでは、成功したスタートアップが書いたコードと失敗したスタートアップが書いたコードを比べると、失敗した方がコード量が多いことがわかっている。フェイスブックも登場当時はたった8つの機能しかなかった。ncie-to-haveな機能はmust-to-haveが市場に受け入れられるとわかった後で十分間に合う。
エレベーターピッチを作る
実装すべきフィーチャーが見えたところでUXブループリントを作る。これはプロトタイプの青写真に当たる。ただ、ブループリントを作る前にコアなフィーチャーが何かを再確認する意味でプロトタイプの要点を30秒程度で語れるようにしておく。これをエレベーターピッチという。
以下が基本フォーマット。
我々は<対象カスタマー>の抱えている<ニーズ、課題>を満たしたり、解決したい。<プロダクト名>というプロダクトは<重要な利点>をカスタマーに提供できる。このプロダクトは<代替手段の最大手>とは違い<差別化の決定的手段>が備わってる。アナロジー:<我々は〜〜業界の〜〜である。>
アナロジーは5秒ピッチとも呼ばれ、メールなどで紹介されやすくなったり、メディアに注目されやすくなったりする。
エレベーターピッチを作る3つの理由
1自分たちのやろうとしていることが明確になること
初期は次々とアイデアが出るので、注力するポイントがぼやけることがある。特に誰のためという問いを再度確認しておくことが重要。
2チームの意識をカスタマーに向けることができる
本質的な質問を何度も自分たちに問いかけることによって、「誰のための?」という視点を深掘りできる。
3エレベーターピッチは数々の関連のないことを貫いて核心を真っ直ぐに突ける。
同じメンバーでも何をしている会社かという問いにメンバーが違う答えを出すことがある。事業の核心は何かを整理してメンバーに浸透させる必要がある。
UXブループリントの作り方
must-haveのフィーチャーをベースにプロトタイプのブループリントを作っていく。
細かいステップの流れは以下。
1リスト化したフィーチャーをグルーピング
2フィーチャーをカスタマー目線で構造化
各グループの流れがどうあれば使いやすいかをカスタマー視点に立って時系列で考える。アプリで言えば画面遷移を考える。重要なことはカスタマージャーニーを元に想定カスタマーの人となりや置かれた状況を念頭に置いて流れを考えること。
3それぞれの画面に実装する機能やコンテンツを明確にする
4フィーチャーを画面遷移に落とし込む
5重点的にテストしたいコア部分を確認する
最も核となるフィーチャーの部分のストーリーを磨き込む。
6メニューの展開部分のUXを確認する
7利用前から利用後のUX全体を想定する
利用する前の期待から実際に利用する際のUX、利用後のフォローアップまでを想定する。
さらに利用前から利用後に至るまで全体を通して累積するUXもある。カスタマーがライフサイクルを通してそのソリューションとどう接するかを考える。
8プロトタイプ案を納得するまで作る
なぜUX全体を想定するのか
現代ではカスタマーに対して単にモノを提供するのではなく、カスタマーの置かれていた状況を十分に理解した上でコト(プロダクト利用を含む体験全体)を提供していかないといけない時代になったから。実はプロダクトの充足感はプロダクトとの接点全体から生まれているため。
例えばfacebookは初期の段階でどの範囲まで情報開示するかをユーザーが決めるプライバシー設定を完璧に作り込んでいた。これにより、最初は実名で投稿することに半信半疑だったユーザーも安心感を持って定着して行った。プライバシー設定によるサービス全体の安心かという累積UXこそfacebookがこだわったポイント。
今回は以上です。